2012年10月15日

「みをつくし献立帖」

あぁ、また泣いてしまった。
しかも、料理のレシピ本に。

でも時代小説は田 郁さん著書の「みをつくし献立帖」だといえば、大きく頷いて下さる方も多いのではないでしょうか。

みをつくし料理帖シリーズは「八朔の雪」からもう7冊。
この本に出会ったきっかけは、
数年前、なにくれとなくお世話になっている近所のcafe&Barの店長さんが、
この本すごく良かったからと2冊だったか3冊だったかを貸してくれ、その面白さにすっかり虜になって今に至ります。

毎回のストーリー展開に、主人公の澪ちゃんに思いっきり感情移入。
泣いたり笑ったり、心配したり、ホッと胸をなでおろしたりと本当に楽しく読んでます。

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そうそう、この夏発売された田 郁さんの初のエッセイ「晴れときどき涙雨/田郁のできるまで」もありました。

その発売の情報は偶然ラジオ番組で耳にしたわけですが、なんとゲストに著者の田 郁さんご本人が!
思わずラジオのこっち側で震え、まずは店長さんにお知らせメール、しばしメール合戦(笑)。

その間も耳は大きくダンボであることに注力し、
ラジオから聞こえてくるお声のトーンといい、口調といい、作品の世界観を彷彿とさせるお人柄がにじみ出ておられ、
そして、「みをつくし料理帖」シリーズの創作の際の作り込みと下準備の凄さに舌を巻いたのは言うまでもありません。

もちろん、エッセイも購入しました。 待ち遠しかったですもの、発売日。
書店員さんに愛されている「みをつくし料理帖」シリーズですから、
レジで支払の時、受け取った本を見た店員さんの表情が、
ハッとしてフッと笑顔がほころんだ裏に「おぬし分かっておるな」がキラリ見え隠れしたように思ったのは言い過ぎでしょうか。

もちろん読後は店長さんへ、そして返却されたエッセイとともに、
冒頭の「みをつくし献立帖」が添えられていたわけで…。
店長さん、粋すぎるのです。

この本はシリーズ内で題材となった料理レシピ。
物語主体ではないですし、料理写真に見とれ、すっかり気が緩んでおりました。

お料理とお料理の間に、「みをつくし料理帖」シリーズの「内緒噺」が挟んでいるのですが、これがいけない。
中盤あたりで涙の堤防が決壊してしまいました。

滂沱の涙、テッシュで鼻をチンとかみ、料理本やのにかなわんなぁと思わず泣き笑い。もちろん、思わずクスリと笑ってしまうエピソードにも心が和みます。

後半の書き下ろし小説は、主人公の澪ちゃんとその大切な友人野江ちゃんの思い出を、宝物を覗かせてもらうような心持ちで読みました。

これからの物語はどうなっていくのでしょうか、
澪ちゃん野江ちゃん、そして登場人物みんなの幸せを願うばかりなり。
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posted by 小阪裕子 at 16:46| 読書感想

2011年10月17日

『半パン・デイズ』

いつの頃からか本を買うといえば実用書ばかり、気がつけば年間数冊の小説を読む程度になって何年も経つ。

だからこそハズレは読みたくないというもの、と、まぁなんて得手勝手なんだろうと思いつつ、
重松清さんの『半パン・デイズ』を選ぶ。
学園もの、しかも小学校ものなのだ。
ある程度の予想はしていたものの、もはや埃のかぶった小学生時代の空気感と記憶が見事に蘇り一気に読んでしまった。

私と違うのは主人公は男の子、いや男子と言うべきかな。
その子の名前はヒロシくん。

物語はすべて彼の視線で語られているのだけど、
成長するにつれての視点の変化までもしっかりしっかり伝わってくる。

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時代設定は1970年代、大阪万博を挟んで大フィーバー、そしてオイルショックの日本が背景のなか、
彼を取り巻く友情と大人との葛藤に軋轢、そして成長なのだ。
と書くとえらく簡単だけど、
ページを開けばストンとその世界に入り込み、自分自身がヒロシになっている。

そんな本だ。

重松さんの本は、じつはそんなに冊数は読んでいない。

ただ、読めば気持ちの奥の深い深いところにある、白でも黒でも割り切れないような思いを言葉という形でいつも差し出してくれる。

どうだろう、私にとってはそれはとてもとても優しく、いたわりのある差し出し方をしてくれるように感じるのだけれど。


大人でも、子供でも心の振れてしまう感情の揺れの根底部分はさして変わらないんだなぁと、
ヒロシや彼を取り巻く登場人物達に想いを馳せてしまう。

またそういう気持ちは向き合うと、結構やっかいで、忙しい毎日だとついおざなりにしてしまったり、
大人になると見なかったことにしてやりすごしたり、、、それはある意味、生きる技でもあるのだけれど。

だけど、ヒロシは一生懸命向き合う、ヒロシ本人にそんな意識はないのかもしれないけど向き合ってすくい上げて、、、。
たまに知らんぷりをしながらでも、それさえも向き合う。

な〜んだ、
ふがいなく思ったり、やりきれなかったり、ジタバタしちゃってエエやんと思わせてくれる弱さと、
またそれを見つめる強さを感じたいがために、重松さんの本に手が伸びた気が今はします。

ジワジワっと体温が伝わる小説でした。

『半パン・デイズ』重松清さん著 講談社文庫
posted by 小阪裕子 at 20:09| 読書感想